実際のFreeDV RADEのPAPRはどの程度?

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 David Roweの7月のブログを読むとしらっとRADEPAPRの値が<1dBから4.5dBぐらい(more likeと曖昧な表記)に引き上げられていた。これはSSB送信機には一般的に300Hzから2700Hzぐらいの帯域制限フィルターが入っていることに最近気が付いたとの言い訳である。その後の記述は今後の対応について書かれているので省略するが今後RADE2の開発の中で0.8dBが得られるよう検討するとのことである。アマチュア無線向けのSSBトランシーバーを使っている我々には現状4.5dBで十分なのでRADEの0.8dBの設計目標自体やめて欲しと思うがご興味のある方は彼のブログと小生のこのブログを詳しくお読みいただきたい。

もう一つ申しておくと、このブログで「for example every SSB radio will have a 300 to 2700 Hz (roughly) filter in the voice path」と大変狭くなっていると書かれているが、よもや国内メーカー各社のデジタルモードの送信帯域フィルターの設定が狭くなっているはずはないと思い調べてみるとICOM(IC-7300)が最も狭くて100~2,900HzでKenwood(YS-590SG)は10~3,000HzでほとんどそしてYAESU(FT-710)は50~3、050Hzの3kHzの無線設備規則制限いっぱいに広げられてるようになっている。ということで国内メーカーのせいにするのはちょっとひどいと思う。

FreeDVのマニュアルの2.8 Transceiver Filters章で「For most FreeDV use, your radio’s receive and transmit filters should be set to the widest possible (typically around 3 kHz). 」と書いたのを忘れてしまっているとは思えないのだけれども????

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1.はじめに

実際はいくらかJE3PRMさんが実測しているブログがあり、これに触発されてFreeDV(V2.0.0)のTransmitのマイク入力にあらかじめ録音しておいた小生の15秒ほどの試験メッセージを流しTransmitの送信機入力をVoicemeeterのカセットテープ画面で録音したWAVファイルをAudacityで実測した。

2.AudcityのインストールとPeak and RMSのプラグインのインストール

まずWindowsのAudacityで適宜インストールしてそのプラグインをインストールした。今回のプラグインはピークと平均は同時に測れる便利さで「Peak and RMS plugin」を使ってみた。ダウンロードはこのページの「Download You may download  Peak and_RMS.ny by clicking here」で行うこと。

3.測定結果

約125mS(9.65秒から9.77秒)の1フレーム部分を選択すれば

Peak -5.274dB

RMS -10.002dB

で差は4.728dBであった。

1フレーム(125mS)のPAPR


10秒(5秒から15秒)を選択すれば

Peak -3.761dB

RMS -9.858dB

差は6.097dBと若干大きな値になる。

約10秒のPAPR

4.SSBトランシーバーでのPAPR許容量との兼ね合い

市販のSSBトランシーバーは同じ定格電力でも机上運用を前提とした高価で大型のものから移動運用のために廉価で小型化したものまで千差万別で実際にどの程度の許容平均電力かは実際に購入して運用しなければわからないと思う。そのためにJARLの策定した電波防御指針から平均電力を出してみる。

SSBの平均電力逓減率

無線設備規則:0.16=ー8.0dB

FCC(コンプレッサー利用時):0.50=ー3・0dB

ピーク電力=10xLOG(2^1/2 x(定格電力))=定格電力+1.5dB

PAPR=1.5dB+3.0dB ~ 1.5dB+8.0dB=4.5dB~9.5dB

となる。

これは

定格100Wの SSBトランシーバで考えると

ピーク電力=141W(電波法の制限)

平均電力=16W ~ 50W

で小生のTS-570Sなどの運用経験から妥当だと考えている。

すなわち、今回の実測したPAPR約6dBはちょうどよい。逆にこれ以上PAPR劣化を少なくしてRADEの仕様のように1dBに追い込んでしまわれると平均電力がピークの141Wに近く出すことになりファイナルを破壊する危険性がある(実際に壊したとの話も聞いている)。もちろん平均電力が0Wに近くても長時間50Wであっても100Wのピーク値が出せる直線性がありかつ発熱に強いSSB機をお持ちの方なら問題ないがこれは極めて少数だと思う。

5.まとめ

商用のリニア無線機の発熱保護を前提にすれば実測のPAPR6dBは適切と思う。なぜRADEの要求仕様を1dB以下とした根拠は開発者でないのでよくわからない。

6.追記

同様な方法で700Dと1600に関してPAPRを測定してみた。測定方法は上記のRADEと同じである。

700D:(クリッピングなし)

Peak -5.955dB

RMS -16.344dB

で差は10.389dB (仕様では12dB)

1600:

Peak -4.932dB

RMS -18.972dB

で差は14.972dB

であった。

これによりRADEは700Dに比べて4dB~5dBは良好であることは確認できた。

以上




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