日本の電波の型式はかなりいい加減

1.はじめに
アマチュア局の免許状に記載されている「電波の型式、周波数、空中線電力、呼出符号」は指定事項と言われてこれを変更する際は厳格な審査が必要と言われている。呼出符号の指定のいい加減さは過去よく笑い話にされるが、これを除くと確かに周波数、空中線電力の単位はW,Hzで国際単位系と呼ばれて厳格に管理されているし、電波の型式もITUで定義されているのでさぞ日本でも厳格に管理されているものと思っていた。その意味でアマチュアにとってはいわゆる3種の神器であり電波の型式は日本独自の慣習だからの過去のパブコメでの廃止論は不敬罪的(?)に総務省から拒否されてきた。

2.日本の電波型式はITUとは違う「日本の常識は世界の非常識」の好例
調べてみると電波の型式についても送信機本体で使われる電波の型式例えばA1A,J3E,F3Eなどでは国試にでるためかさすがに疑義はない。しかし、いわゆるデジタル通信でPCに接続される付属装置の電波の型式に関してはかなりおかしいのである。

例えばFT8の電波の型式はFCCではJ2Dである。FreeDVの電波の型式ではFreeDVのWIKIではJ2E,J2Dである。それに対して(JARLの)付属装置諸元はFT8では「電波型式:F1D」FreeDVでは「電波型式:SSB/G1E、G7W FM/F1E、F7W」で最初の英記号からが異なっている。

この違いに関してGoogle等で検索して調べてきたが全く見つからない。その中で本年7月31日のパブコメ結果の意見31番でこの違いが明らかになった。この違いは「電波法関係審査基準」という本省と総合通信局でやり取りする「訓令」の中の一覧表の備考に以下のように書かれていて本来一番目の英字記号は「J」なのに「F」または「G」とされているのだがこの理由の説明はこの訓令の中にはない。この備考によると2番目以降は変わらないように思えるのだけれども。

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備考1  主搬送波を周波数変調又は位相変調した単一の副搬送波で振幅変調(抑圧搬送波単測波帯の場合に限る。)することにより等価的に周波数変調波又は位相変調波を得る場合は、主搬送波の変調の型式を周波数変調又は位相変調とする。
    2  電波の型式の指定は、総務大臣が別に告示する記号によることができるものは、これにより表示するものとする。
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元々訓令は非公開であったが審査の透明性の確保の圧力で近年公開されたが電波振興会で定価10、340円と高価で総務省以外では業務以外では手元に置かないものである(アマチュア向け抜粋は元林さんの努力で彼のサイトに収録されている)。告示のようにパブコメにも官報にも乗らないので本省の一存で電波の型式は変えられるのである。

それから位相変調の中でキャリアを複数に分けるOFDMが多用されているためこれをその他Xに分類するのが一般的である。小生もこの例で習ってFreeDVの電波型式をX1E, X7Wとして諸元を作成し申請し実際に免許されている。しかしながら、その他Xを使うとなんでも当てはまる分類学としては厄介な記号が許されるのだからいい加減である。

もう一つ電波の型式がいい加減に扱われている例を挙げると第一世代の携帯電話はアナログでしたがこの音声チャネルは免許状には電波型式がF3Eとなっていた。この頃はFAXとかモデムがアマチュアのデジタル通信のようにマイクスピーカー端子に外付けで盛んに音声チャネルを介して利用されていた。これらが使用されるときの電波型式はF2DとかG2DとなるはずですがF3Eとされていた。これらは付属装置ではなくアダプターと整理して無線局の一部ではないと整理して指定事項という面倒なことに巻き込まれないようにしていたのだと思う。

3.まとめ
以上から3種の神器の一つである電波の型式の中身を見るとかなりいい加減で都合のよいように解釈されているのがわかってきた。このような中で技適を失う場合に限定した「既設のアマチュア局の送信機に増設、取替と附属装置を一緒に追加し」た場合のみではあるが「免許手続き簡素化」適用後でも「個別の電波型式の追加(G7W等)の場合は、保証が必要」とは説得力に欠ける免許手続きである。このようないい加減な免許手続きは早く改正して保証は一切不要に簡素化すべきである。

(2020年8月4日記)





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