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TS-570SDRプロジェクト

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  1.はじめに もう40年近く使ってきたTS-680のリレーなどの故障でそろそろ引退の時期になった。引き継ぎの機種にTS-570を選んだ。 理由は 1)もうTS-680はヤフオクでの出品頻度が下がってしまっている。後継機種のTS-570は3万円ぐらいで定常的に出品されている。部品の経年変化を考えるとTS-570が断然よい。 2)ファイナル部全部がモトローラMOSFETで50MHz帯まで一貫構成されているとともに2つのANTの選択が可能なANT TUNERが内蔵されている。本体がTS-680と同じサイズでありブロック化されており改造が容易である。 3)単体で十分使える性能なので基本電源ボタンを押すだけで運用開始できる。  4)同じKenwoodなのでTS-680SDRに合わせたRedPitayaの改造ソフトがそのまま使える。 等である。 2.準備 ヤフオクでTS-570M 50W機を28,500円で落札した。付属としてつけてくれたいたハンドマイクの銘板を見て同じヤフオクでの落札情報を見てびっくりした。なんと3万円台で取引されている。品名はASTATICS575−M6である。内蔵の006Pが消耗しているようでネジを外して内部を見たが大変きれいである。 電源を入れてざっとチェックをしたが、MULTICHのボリュームがいわゆる「滑るまたは転ぶ」のとLCDのアクリル板が曇っている。これはTS-570の2大故障のようで早速修理に取りかかる。 3.MULTICHボリュームの修理 Micのボリュームの調整をする時に最初は数字が1つずつ上がるが8からの増加は全くいい加減になる。原因はロータリーエンコーダーの内部にグリスがたっぷりつけられていてこれが接点部にまわって接触不良を起こすとのこと。対処は分解してアルコールまたは接点洗浄剤でクリーニングするか代替え品がDigikeyにありこれを購入して置き換えるかの選択である。日本ではDigikeyの代理店のマルツで送料も安く入手可能である。まずは失敗覚悟で分解クリーニングに挑戦する。いったん分解しても再度組み立て自体は容易であるが各部品の上下と表裏をよく記憶しておくこと。アルコールと接点洗浄剤でよく拭き取ることで回復できた。ただしグリスを完全に除去したので回転の感触はやや重くなった。使っているうちに滑らかになり問題ではなくなった。 ...

到来方向ともに偏波面を考慮した受信スモールループアンテナの製作

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  1.はじめに 10年ほど受信スモールループ用のアンプLZ1AQを使って到来方向を区別するために直角にクロスした2つのループを切り替えて利用してきた。 今回その発展として 1)2つのループを別個のアンプに収納してRedPitayaの2つの受信端子に接続してThetisなどのSDRソフトの2チャネル同時受信が可能とした ことに併せて 2)従来の2つのループは垂直偏波信号の受信であったが水平設置した3つめのループを追加して水平偏波信号を受信可能とした とした。その上で、LZ1AQのアンプにはループアンテナの切り替え機能があり3つのループアンテナを組み合わせてNVISおよびNHIS状態において偏波ダイバーシティー受信が可能とした アンテナを製作した。 図1.3つのループと2つのアンプのスモールループ 2.形状 直径5.5mmの園芸用のグラスファイバー支柱を長さ6cm直径6.0mmのアルミパイプで連結してループ形状にしてその周りに3.5sq~5.5sqの撚線を這わせたアンテナとした。これを3つ製作し図のような配置のアンテナを製作した。 LZ1AQアンプの切り替え機能を利用したので3つのループアンテナの選択は 1)天頂方向からの回転偏波信号受信 2)水平方向からの回転偏波信号受信 が可能になった。 図2.直径5.5mmのグラスファイバーを長さ6cm直径6.0mmのアルミパイプで連結 図3.直径1.4mのループ形状に

実際のFreeDV RADEのPAPRはどの程度

  1.はじめに 実際はいくらかJE3PRMさんが実測している ブログ があり、これに触発されてFreeDV(V2.0.0)のTransmitのマイク入力にあらかじめ録音しておいた小生の15秒ほどの試験メッセージを流しTransmitの送信機入力をVoicemeeterのカセットテープ画面で録音したWAVファイルをAudacityで実測した。 2.AudcityのインストールとPeak and RMSのプラグインのインストール まずWindowsの Audacity で適宜インストールしてそのプラグインをインストールした。今回のプラグインはピークと平均は同時に測れる便利さで 「Peak and RMS plugin」 を使ってみた。ダウンロードはこのページの「Download You may download  Peak and_RMS.ny by clicking here」で行うこと。 3.測定結果 約125mS(9.65秒から9.77秒)の1フレーム部分を選択すれば Peak -5.274dB RMS -10.012dB で差は4.738dBであった。 10秒(5秒から15秒)を選択すれば Peak -3.761dB RMS -9.859dB 差は6.098dBと大きな値になる。 4.SSBトランシーバーでのPAPR許容量との兼ね合い 100W SSBトランシーバで考えると ピーク電力=100W(電波法の制限) 平均電力=25W(100Wから-6dB)くらい(非効率なリニアアンプに起因する発熱からの制限) が妥当だと考えている。 これは本来のPAPR=「PeakとRMSの差」で6dBである。すなわち、今回の実測したPAPR約6dBはちょうどよい。逆にこれ以上PAPR劣化を少なくしてRADEの仕様のように1dB以下(本来のPAPR=4dB以下)に追い込んでも平均電力が50W近くになってしまい発熱でファイナルを破壊する危険性がある(実際に壊したとの話も聞いている)。もちろん平均電力が0Wに近くても長時間50Wであっても100Wのピーク値が出せる直線性がありかつ発熱に強いSSB機をお持ちの方なら問題ないが少数だと思う。 5.まとめ 商用のリニア無線機の発熱保護を前提にすれば実測のPAPR6dBは適切と思う。なぜRADEの要求仕様1dB以下とした根拠...

FreeDV RADEに音楽ソースを通してみると

  1.はじめに 先日ある方からRADEに音楽を流してみると、「とても聞けたものではない」と聞いたので、面白そうだと思ってやってみた。 2.実験 音楽ソースとして、 2022 WorldCupのジングル をYutubeからダウンロードして48kpbs WAVフォーマットでオーデイオファイルとした。これをVoiceMeeterのカセットテープ画面で再生してFreeDV2.00の"Input From Microphone To Computer"に入れていったん画面 "Record"をクリックしてRADEのエンコーダー出力ファイルを作った。その後これをFreeDVのToolsの"Start Play File"でFARGANでデコードしたスピーカー出力を再度VoiceMeetrのカセットテープ画面で最初の約20秒を録音してMP3変換した。 3.結果 まったく原音のように音楽には聞こえないが、ノイズっぽい歪んだ音にも聞こえない。どちらかというと鼻歌である。 FreeDVの資料ではエンコーダーは人体の ソース・フィルターモデル として扱っていると書いてある通りチャネルボコーダーとしての音声特徴量をまじめにできるだけ正確に抽出していることが理解できたが、当たり前のことだが楽器がソース・フィルターのモデルではないので音楽音源にはまったく不向きであることもわかった。資料に「音声特徴量の抽出」とだけ読んでは理解できないやってみる価値がある実験であった。

FreeDV V2の魅力

  1.はじめに 以下小生の体験をもとにFreeDVの魅力を書いてみました。ただし不満もありますがこれは書いていませんのでご注意を。 2.FreeDVの魅力 FreeDVの魅力は 従来のSSB音声通信と較べて ・所要無線帯域幅はSSBと同じく3kHz以内で同等以上の最小感度の実現   ・RADEによりPARPが1に近くなりスピーチプロセッサー不要 ・音声符号化に電波伝搬路のフェージングによる劣化がなくAGC不要 ・音声符号化で電波伝搬路からの雑音が抑圧されてNR,NB機能不要でアナログFM以上の雑音品質 ・同期再生機能で同調操作がいらず一般利用者に不評なSSBのモガモガ音なし ・スマホの4kHz音声帯域を上回る8kHzで冬季には相手局のリアルすぎる咳きこみ音が楽しめる ・定量的な受信電波伝搬路の、S/N、フェージング周期変動をリアルタイムで可視化 ・FreeDV Reporterで交信相手局のみならず周辺のFreeDV受信局情報をリアルタイムで可視化 また、過去約30年間アマチュア無線界において商用特許権で保護された音声符号器の採用で自由な進歩が阻まれてしまったが、GNU License条件でソースコードが開示されており誰でも自由に改善できることは音声符号化技術に興味のあるアマチュアにとっての魅力です。 今回FreeDVを実体験することで、1923年にもっとも周波数占有帯域が狭くもっとも電力効率の良いとされるSSBの登場でその後開発が停滞したHF帯音声無線技術がやっと100年後にAI技術の進歩次第ではSSBを凌駕する通信方式をアマチュア無線界から提示できる可能性を一般のアマチュアも感じてもらえると思っています。 3.参考文献 鈴木誠史、吉谷清澄; 通信方式としてのSSBの変遷; 通信総合研究季報、 Vol 34 No.171、 June 1988 David Rowe, Jean-Marc Valin; RADE: A Neural Codec for Transmitting Speech over HF Radio Channels;  2025年6月10日 記

FreeDVの新モードRADEの10MHz帯占有帯域幅を2kHz以下に制限するイコライザーは必要か?

 FreeDVの新モードRADEは2つの深層機械学習を採用して従来のモードに比べて良好な音質で好評であるが、現状利用可能な暫定版は内蔵送信フィルターを省略してできるだけPAPR(ピーク対平均電力比)を小さくしているということで占有帯域幅は本体無線機のフィルター規格値3kHzになってしまう。このことは無線設備規則上問題ないが、JARLバンドプランが10MHz帯だけは2kHz以下となっている現状からこれに対処するために付属装置に付加的な送信フィルターを追加する検討が進められておりこの成果はJH1PCFさんの本サイトの記載とCQ ham radio QEX No.54の「FreeDV最新ガイド」のなかで詳しく紹介されている。 しかしながらIARUのバンドプランのデジタル音声モードの占有帯域幅は全バンドでアナログSSBと同じく3kHzである。10MHz帯に限ってはSSBの運用自体が一般的に認められていない中でアマチュア人口の比較的少ないことを理由に豪州とニュージーランドなどの南半球では3kHz幅のSSBの運用を認めている。以上からJARLのバンドプランの中途半端な2kHz規定に技術的妥当性と国際的な認知度と将来性はあるのかそしてこれは新たな「ガラパゴス規定」の典型ではないかと以前から危惧していた。 今回RADEの問題を契機にしてJARLのバンドプランの2kHz規定そのものに我々が見過ごしていた制度上の問題があることがわかり別途「 改正されたJARLバンドプランの10MHz帯の占有帯域幅2kHz以下は無線設備規則違反で非合法 」としてまとめることができた。 たしかにRADEだけを考えると局所的な問題として技術的に回避して片付けられなくもないが、RADEとは異なる新たなデジタル音声技術の今後に大きな制限を与える懸念から本質的な解決を総務省とJARLに指摘しなければ将来にツケを回すと思っている。10MHzを14MHzのサブバンド的に日頃から利用されている諸兄の大所高所からのご意見を伺いたいと思い小生の考えをここに記載した。 以上 (2025年3月3日記)

改正されたJARLバンドプランの10MHz帯の専有帯域幅2kHz以下は無線設備規則違反で非合法

お断り: このブログはFreeDVのRADEモードで久しぶりにQSOさせて頂いた方と「10MHz帯でJARLバンドプランの2KHzに合わせる」技術的テーマのメールのやり取りで、「技適の占有周波数帯域は3kHzである」ということを教えて頂いたことから始まった。電波法の条文を読むのは久しぶりでありもの論理構成力の低下ともの忘れの激しい頭脳で体力的にも厳しく、10MHz帯の占有周波数帯域をどのように決めたかを巡ってJARL内部での議論と総務省担当のやり取りもまったく知らず調べた事実だけに基づいて推定する作業は4ヶ月を要した。よって、このブログに書かれた推定の部分は小生の推理であり事実確認したものではないことを明記しておく。 新たなお断り:このブログはなぜこのようになったかを直接事実確認していないのでどのように無線設備規則違反を起こしているかについて論理的に詳しく書いたが読むのにエネルギーが必要と思う。結局どうなのよ?と思われる方は最後の6月21日の追記部分を読んで頂き必要に応じて本文を読んでいただければ、引退組にとっては「自分も引き継ぎに失敗したこともあるし、よくあることね」と腑に落ちることが書かれいるのでここだけでも読んでいただきたい。 (2025年6月22日追記) 1.はじめに 令和5年9月25日施行の JARLバンドプラン で、10MHz帯の10.130-10.150MHz帯の使用区別は占有周波数帯幅が3kHzの電波の型式は狭帯域のデータであったのが10kHz拡大されて10.120-10.150MHz帯で全ての電波型式(SSBとAMを除く)と拡大されたが占有周波数帯幅が2kHzに縮小された。 狭帯域のデータ以外の運用も可能になって一年経過し、利用者が少数の1,2級ハムのみの周波数帯域のため混雑もなくデジタル化を促進するこの拡大自体は喜ばしいが、なぜか占有周波数帯幅が従来の3kHzから2kHzに狭くなっている。 2.関連する電波法関連規定の調査 2.1  総務省告示第八十号 :2kHz以下 JARLのバンドプランに法的拘束力を与えるために総務省告示第八十号が制定されており、JARLバンドプランと同様に10.120-10.150MHz帯はすべての電波の型式で利用可能であるが占有周波数帯域は2kHzとなっている。 これで例えば最近話題のデータ通信VarACで3kHzの運用...