改正されたJARLバンドプランの10MHz帯の専有帯域幅2kHz以下は無線設備規則違反で非合法

お断り:このブログはFreeDVのRADEモードで久しぶりにQSOさせて頂いた方と「10MHz帯でJARLバンドプランの2KHzに合わせる」技術的テーマのメールのやり取りで、「技適の占有周波数帯域は3kHzである」ということを教えて頂いたことから始まった。電波法の条文を読むのは久しぶりでありもの論理構成力の低下ともの忘れの激しい頭脳で体力的にも厳しく、10MHz帯の占有周波数帯域をどのように決めたかを巡ってJARL内部での議論と総務省担当のやり取りもまったく知らず調べた事実だけに基づいて推定する作業は4ヶ月を要した。よって、このブログに書かれた推定の部分は小生の推理であり事実確認したものではないことを明記しておく。

1.はじめに

令和5年9月25日施行のJARLバンドプランで、10MHz帯の10.130-10.150MHz帯の使用区別は占有周波数帯幅が3kHzの電波の型式は狭帯域のデータであったのが10kHz拡大されて10.120-10.150MHz帯で全ての電波型式(SSBとAMを除く)と拡大されたが占有周波数帯幅が2kHzに縮小された。

狭帯域のデータ以外の運用も可能になって一年経過し、利用者が少数の1,2級ハムのみの周波数帯域のため混雑もなくデジタル化を促進するこの拡大自体は喜ばしいが、なぜか占有周波数帯幅が従来の3kHzから2kHzに狭くなっている。

2.関連する電波法関連規定の調査

2.1 総務省告示第八十号:2kHz以下

JARLのバンドプランに法的拘束力を与えるために総務省告示第八十号が制定されており、JARLバンドプランと同様に10.120-10.150MHz帯はすべての電波の型式で利用可能であるが占有周波数帯域は2kHzとなっている。

これで例えば最近話題のデータ通信VarACで3kHzの運用は改正前は自由だったが改正後はバンドプラン違反で運用できなくなった。FT8もSuperFOXで帯域幅1.5kHzまで拡張されて2kHz超えは目前で将来が心配である。また、解放されたデジタル音声は他のバンドでは占有周波数帯幅は3kHzであるが10MHz帯は2kHzで運用しなければならないことになる。

新たに運用が可能になったデジタル音声も2kHzで運用しなければならない。例えばFreeDVは現在の7つあるサブモードで最新に属する2020BとRADEがフィルターを付加せずに利用することはできない。そしてFreeDVは単なるデジタル音声の一つであり今後どのようなフォーマットが出現するか予測がつかないことである。

2.2 総務省告示八十一号:3kHz

一方、電波法第三章「無線設備」の具体的な規定である無線設備規則に関連する総務省告示第八十一号で規定される占有周波数帯幅の許容値を調べると該当する10.120-10.150MHz帯の占有周波数帯幅は例えば狭帯域データとデジタル音声は(D7D~G7D,その他の電波の型式)の欄が適用されるのでこれは3kHzでありこれは改正前と変わっていない。

驚いたが安心した。

2.3 10MHz帯は占有周波数帯幅3kHzで免許取得で合法運用

なぜ安心したかは、無線局の申請の際に必要な工事設計書の最後に何気なく共通にあるその他の工事設計欄の「電波法第3章に規定する条件に合致する」にある ☑ にチェックを入れずに提出したら必ず却下されるとおどかされた昔のことを思い出して欲しい。そしてその理由は電波法で総務大臣の義務としての審査ですべての無線局に共通した重要なチェックポイントであるからとの説明もまた思い出して欲しい。

第七条 総務大臣は、前条第一項の申請書を受理したときは、遅滞なくその申請が次の各号のいずれにも適合しているかどうかを審査しなければならない。

 工事設計が第三章に定める技術基準に適合すること。

このチェックのおかげで我々の無線設備は第三章に属する無線設備規則に合致しているとして免許を受けているので、JARLバンドプランと第五章の省令とは無関係にこの無線設備に10MHz帯で3kHzで合法運用できる。これで臨時の電波の発射の停止を命じられ最悪1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられることはない。

一昨年の10MHzの全電波型式への開放時に関し複数の免許人から10MHz帯での運用にあたって変更申請の提出が必要かの問いに総合通信局の回答はすべて「不要」であったことから総務省は占有周波数帯域は3kHzと理解しており2kHzとした総務省告示第八十号の存在を認識していないのではないかと思う。

さらに調べてみると1、907.5kHzから1,912.5kHz帯で同じ違反をおこしている。総務省告示八十一号には注3で

注3 1,907.5kHzから1,912.5kHzまでの周波数の電波を使用する場合の占有周波数帯幅の許容値は、占有周波数帯幅の許容値の欄に規定する値にかかわらず、3kHz以下とする。

と明記しているにも関わらず 総務省告示第八十号では全ての電波の型式で利用可能であるが占有周波数帯幅は備考4の適用で0.5kHz以下として狭帯域データとデジタル音声を3kHzで運用できなくしている。JARLバンドプランも0.5kHzと3kHz運用はできない。

3.目的の混同と論拠不明

3.1 無線設備の規格を総務省告示第八十号で別規定することは無線設備規則違反

前項でのべたように、総務省告示第八十号の標題は「周波数ごとの使用区分とその電波の型式に関する規定」であり総務省告示第八十一号の標題は「占有周波数帯幅の許容値」として明示的に区別している。また、電波の型式は占有周波数帯域を含まないことは施行規則第四条の二を読めばわかる。よって総務省告示第八十号で異なる占有周波数帯幅を規定すれば無線設備規則違反となるのは明白である。それなのになぜ総務省告示第八十号に異なった占有周波数帯域の注を入れて本来の占有周波数帯幅の適用を妨げるのは謎である。

JARLの「電波型式を決める規則」は施行規則第四条の二の詳細な説明であるが、その中に「国際条約(ITUを指す)では、原則としてこの電波型式の前に、占有周波数帯幅の許容値を示す4桁の数字・文字も記載されることになっています。」が入っている。しかしこれはITUの定義を説明するだけででありこれが原因ではないと思われる。

 もう一つ考えられること4項で述べるように電波の型式と占有周波数帯幅は「基底(ベースバンド)信号」と「発射電波」(RF)信号の2つの捉え方があり外部付属装置を利用する場合に混乱を起こすことがあることである。

いずれにしても、無線設備規則違反を避けるためには占有周波数帯幅は総務省第八十一号で規定されることを確認する必要がある。

3.2 論拠不明

改正にあたって10MHz帯に関して目的と根拠が明示していない。利用者数が同じで利用者の利用時間が同じであれば、電波型式がデータに限定されていたところを全電波型式としても同じバンドで複数の電波型式の同時送信はできないので需要は変わらない。占有周波数帯幅はすべて同じ3kHzであることから必要な周波数幅は同じ20kHzでよい。それにも関わらず利用者数か利用時間が増加すると期待したのか周波数幅を30kHzにしている。その上で総務省告示第八十号では占有周波数帯幅を3kHzではなく2kHzと縮小させた論拠は全く理解できない。既に許容していた占有周波数帯域を3kHzを2kHzに縮小する結論は「角をためて牛を殺す」例になるとの反対意見がJARL周波数委員会で出なかったのか不思議である。

先進的事例として10MHz帯では同じR3に属するオーストラリアとニュージーランドで今回拡張された10.120-10.130MHz帯を3kHzの占有周波数帯幅でSSBに解放されている。この際我が国が2kHzを導入することは国際的整合性の観点から馬鹿げているのは明白である。もちろん今回はバンドプランはデジタル化の推進との観点でアナログを除外する方針には誰もが理解できると思うのでアナログ電波型式の使用を排除する記述をすればよいのに占有周波数帯幅で排除する論理は理解できない。

繰り返すが電波法のバンドプランは「占有周波数帯幅」を決めるのが目的ではなく利用される電波の型式を選択肢しその占有周波数帯幅を総務省告示第八十一号から得てその電波の型式の需要に応じた「周波数幅」を決めるのが目的である。例えば7MHz帯でのCWを需要の減少に応じて周波数幅を「7,000kHzから7,045kHz」から「7,000kHzから7,030kHz」としたのが今回の改正の目的でありCWの占有周波数帯幅の0.5kHzは変動がない。SSBは3kHzである。AMは6kHzは変動ない。また、デジタル音声はアナログ音声と同じでありここでは3kHzが適用されるのは常識である。従来3kHzの狭帯域データ割り当てをすべての電波型式にする命題においてはもっとも共通性をもった3kHzを維持する以外に現実的な解はなく2kHzの占有周波数帯幅の選択はあり得ない。

 4.総務省告示第八十号は廃止しバンドプランはIARU準拠に

前項においてJARLバンドプランが総務省告示第八十号を介して無線設備で規定されている占有周波数帯幅を否定していることがわかった。

 長年JARLが所掌していた外部付属装置の仕様において占有周波数帯幅と電波の型式を記載する習慣があった。一方この習慣は以下のように誤解を生むと一部では問題視されていた。

 1)電波法での占有周波数帯幅の定義は送信装置の出力端での「発射電波」(RF)信号の規定であり無線設備規則第六条で規定されている。一方JARLの外部付属装置の占有周波数帯域はマイク端子または外部付属装置入力端子での基底(ベースバンド)信号であり2つは異なるものである。

 2)同様に電波の型式もベースバンドで考えると異なるものとなるため誤解を生むものであった。すなわち外部付属装置を付加して無線設備を運用する場合の電波の型式をJ3Eとするか外部付属装置でみた型式分類、例えばFT-8をF1Dとするかである。電波の型式は無線設備規則ではなく施行規則第四条の二で「電波の主搬送波の」と規定されている。このためアマチュア業務以外では本体無線設備にFT-8機能を内蔵して運用時はもちろんF1Dではあるが外部付属装置で運用する場合はJ3Eと解釈している。これは一見矛盾しているように見えるが無線設備をSSBモードにして外部付属装置をマイク端子に接続し音声周波数帯内でデジタル変調している限り矛盾なく成り立つことを以下の例で示している。

 アナログ携帯電話でのパソコン通信をデータモデムをイヤホーンマイク端子に接続して使っていた時のことを思い出して欲しい。これは指定電波型式はF3EにもかかわらずPCとデータモデムを外部付属装置とすることとしF1Dを通すことを電波法上合法としていたからできたことである。この考え方はPCをアマチュアのVHF/UHFのポータブル機のマイクイヤホーンジャックとかHF機のマイク端子またはデータ通信用の入出力端子に接続する外部付属装置として適用できる。

 一昨年の改正で「アマチュア局特定外部付属装置」に関して「無線局事項書及び工事設計書への記載は不要」で変更申請は不要と整理された。JARLの外部付属装置の仕様に記載の占有帯周波数帯域幅と電波の型式は電波法上意味をもたなくなったはずである。そして、上記の考えをとれば、従来外部付属装置を利用する場合は電波法の指定事項である電波の型式に束縛されることはなくなったはずである。

 総務省告示八十号の注の占有周波数帯幅の記載がこれに起因するなら一昨年の改定時点で注は削除しなければならなかったことになる。

 よって、今回の問題提起を経緯に契機に外部付属装置に関する電波型式と占有周波数帯域の定義を他の無線業務の扱いに合わせることを明確に確認し総務省告示第八十号を廃止を提案するとともに総務省告示八十一号の注記を含めて再整理することを提案する。

 今後は電波法での電波の型式と99%占有周波数帯幅ではなくIARUのバンドプランの定義、具体的にはAll modes, AM,Digimodes, Digital Voice,Phoneなどと-6dB定義の占有周波数帯幅、に基づいた国内アマチュア無線家の総意による国際的整合性をもったものになるものと考えている。

5.まとめ

1)現在の電波法の規定は10.120-10.150MHz帯は全ての電波型式で占有周波数帯幅は3kHzであることを確認したい。同様に1、907.5kHzから1,912.5kHz帯においても全ての電波型式で占有周波数帯幅は3kHzであることを確認したい。

2)AMを占有周波数帯幅を3kHzで運用することは好ましくないので1、907.5kHzから1,912.5kHz帯においては除外しまた10.120-10.130MHz帯においてはアナログの電波の型式に関しては新たな割当て需要はないことからSSBとAMの電波型式を除外することも妥当と考えている。

トランシーバをSSBモードにしているにもかかわらず外部付属装置経由でしか運用できずトランシーバのマイクで喋ってはだめというFreeDVを使うオーストラリアとニュージーランドのハムにはほとんど理解不能な屁理屈(FT-8を運用する場合は気づかずに同じことをしているのだけど)に映るかもしれないが電波政策的には立派な外部付属装置の使いかたである。

よってJARLバンドプランを改正時に遡って

1)1、907.5kHzから1,912.5kHz帯においては「AMを除いた全ての電波型式で占有周波数帯域は3kHz」

2)10.120-10.150MHz帯においては「SSBとAMを除いた全ての電波型式で占有周波数帯域は3kHz」

と誤記訂正するべきである。 

3)一昨年の改正で「アマチュア局特定外部付属装置」と「周波数等の一括表示記号制度」が制定されたことから、総務省告示第八十号を廃止し総務省告示八十一号の注記を含めて再整理することを提案する。そして総務省告示第八十号の「アマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別」はIARUのバンドプランに準拠した国際的整合性をもってより明確な論理性を有するJARLバンドプラン(いわゆるバンドプランの論理もよくわからないのでこれも削除)として制定運用することを提案する。

(2025年3月23日追記)















コメント

このブログの人気の投稿

RedPitayaを使ったSDR構成のまとめ

DAIWA CNW-518 アンテナチューナのフィルター特性

Thetis完全対応:sdr-transceiver-hpsdr-ananxd(3月1日改定)