1.8MHz帯と3.5MHz帯の電波政策の研究と周波数再編アクションプランへの提案

1.はじめに

1.8MHz帯と3.5MHz帯のFT8の運用周波数の開放は達成したが、いまだに全面的な開放には至らず40万のアマチュア局にとって不自由な帯域となったままである(この開放は混信を防止する交信手順を前提に他の業務と割当て帯域全体を利用可とすることであり、いわゆる拡大ではない)なぜこの不自由な状況が長期間続くのかを戦前からの電波政策の変遷を研究し「原因は100年前の日本政府のアマチュア無線への周波数割り当て政策にありこれを正すため「周波数再編アクションプランでJARL結成100周年とワシントン会議100周年にあたる2026年から2027年までにと開放期限を切った重点政策として今後取り組むべき課題に取り上げるべき」との結論になった。

2.各国の割当原則

1.8MHz帯と3.5MHz帯の各国のアマチュア業務への割当ては以下の通りであるが日本と韓国のみが異常に狭い。中国は以下の図には含まれていないが第3地域に従った国内分配である。

1.8MHz帯と3.5MHz帯のFT8運用周波数の開放


3.周波数割当表

具体的な周波数割当表を以下に示す。
1.8MHz帯の周波数割当表

3.5MHz帯の周波数割当表(1/2)

3.5MHz帯の周波数割当表(2/2)


第3地域における分配をみるとアマチュア業務およびその他の業務がすべて一次的基礎として全帯域を共有しているが国内分配では各業務を細分化して専用帯域として規制しているのがわかる。一部アマチュアがその他の業務と共有している帯域はアマチュアが二次的基礎として扱われている。

4.国際分配と国内分配の比較

両者の詳細比較を以下に示す。

1.8MHz帯と3.5MHz帯における第三地域と国内分配との違い

アマチュアが利用できる帯域は「帯域の分配方法」が異なることであり結果として1.8MHz帯では諸外国に較べて40%、3.5MHz帯では43%の帯域しか運用できずにいる。

5.国際分配と国内分配の推移

両者の比較を以下に示す。



国際分配を見ると戦後1947年のアトランテックシティー会議に第3地域では1.8MHz帯で200kHz、3.5MHz帯で400kHzに減少しているが他業務との一次的基礎での共存原則は完全に維持されている。国内では1927年から戦前では両帯域とも1チャネルの割り当てであったが、戦後の再開時に1.8MHz帯での割り当てはなく、3.5MHz帯では75kHzから約65年間で80kHz、171kHzと順次拡張されている。再開からの40年間は大きな拡張はなかったが2000年以降の拡張時期は船舶通信のGMDSS移行と一致する。(注1)

比較として2.項の表で韓国は現在でも25kHz、60kHzと日本に較べて狭い帯域の運用を迫られている。両国を比較すると日本は戦後の新たな電波政策とこれを支える多数のアマチュア(日本40万局、韓国4万局、1.8MHz帯のFT-8はいまだ1.81/1.84MHzのスプリット運用)のたゆまぬ努力(注1)による要因が考えられる。

6.1.8MHz帯と3.5MHz帯の分配の歴史

アマチュア業務の1.8MHz帯と3.5MHz帯は移動、固定業務と共用利用で1927年(=20世紀初頭)のワシントンDC会議で制定された。(注2)

ワシントン会議で決定されたアマチュア業務の周波数割当表


1938年のカイロ会議の割当原則でも下図のようにアマチュア業務は固定業務とか移動業務とかと共用で割り当てられており現在でもこの割当原則は堅持されている(注3)。この放送を除く3業務の共用利用は現在でも大変珍しくなぜ現在欧米で「スペクトラムコモンズ」の議論に興味を持つかの歴史的背景をワシントン会議での3業務共用議論(8.項の「技術委員会第1分科会」)に見ることができる。(注4)現在3.5MHz帯では多くの海外からのアマチュア無線以外の信号が受信できるがこの中には国際割当に従って合法的に運用している固定・移動局も多く存在することを承知している日本のアマチュア局は少ないのではないかと思っている。総務省の電波政策で過去の経緯で日本のアマチュア局だけが共用で利用させてくれないのが本質的な問題である。

カイロ会議での1.8MHz帯と3.5MHz帯の周波数割当

ちなみにこの160mと80m以外の周波数の割り当て原則を確認すると(注)


カイロ会議での7MHz帯と14MHz帯の周波数割当


のように7.2~7.3MHz帯で放送業務と共用であるがアマチュア業務のみに利用が規定されている割当制度である。この帯域の選定理由は「アマチュア業務の高調波による混信の危険を避けるため」と書かれている。当時40m以上の短波帯は希少資源ではなく広大な未開であるため各業務間で「一定の基準を設けること」で縛られない自由にいられる専用帯の域設定が可能であったからである。それに対して日本は単一周波数でかつアマチュア業務専用割当である。この経緯の詳細は以下の7項と8項で記述する。

7.戦前の電波政策:ワシントン会議の前後の国内経緯

日本国内において1927年10月開催のワシントン会議に向けたアマチュア業務の許可方針は1926年5月3日の陸・海・逓 三省会議で(注3)

◎第六回会議 決定事項 
四、実験及素人無線許可方針
陸軍側ニ於テハ壮丁教育ノ関係上有利ナルノミナラス 科学ノ進歩の促進イル上ヨリ 使用波長ト電力トヲ制限シ且 通信ノ秘密ヲ厳守セシムル条件ニ於テ、一般ニ許可スヘシトノ意見ナリ
海軍逓信省ニ於テハ技術上取締困難ナルノミナラス 公衆通信ノ性質ヲ有スル通信ヲ之ニ依リ行フコトアリ 之等ニ対スル取締ニツキ相当研究ヲ要スルモノアルニツキ 会議迄ニ研究スルコトニ決定

陸軍省は原則賛成、海軍省は取締り方法の確立を、そして逓信省の意見としては電務局が「アマチュアが公衆電報を扱い逓信ビジネスを侵害する」可能性を危惧したようです。結局のところ議事録にあるとおり「ワシントン会議までに研究しよう」

とした。アマチュアの電波行政としてアマチュアへの割り当て促進側の主張を踏まえた「科学の発展」「国民の啓蒙教育」「通信の秘密厳守」「非公衆通信」「妨害」「不法局の取締」が挙げられている貴重な記録であるが結果として

結論が出せませんでした

とある。

その後

1927年(昭和2年)のワシントン会議で世界的なアマチュアバンドが決まりましたが、日本のアマチュア周波数は三省協定により、下表の1.775, 3.550, 7.100, 14.200, 28.400, 56.800MHzの6波に限定されていました(但しそれさえも1941年12月より禁止)。

とある。

以上のようにアマチュア業務を含めて電波政策は陸・海・逓 三省が所掌しており陸軍以外はアマチュアの開設に関して否定的で、ましてや欧米のように1.8MHz帯と3.5MHz帯で複数業務と共存させても数百kHzをアマチュアに与えることは考えてもいなかったことになる。

8.ワシントン会議での日本代表の発言と欧米代表の反応

1910年に韓国併合が行われて1945年の朝鮮総督府が降伏文書に調印するまで日本の統治下にありワシントン会議には以下のように日本代表が朝鮮代表を兼務している。(中国は日本の植民地ではなく独立した代表団を送っている)(注3)

ワシントン会議日本代表名簿

アマチュア業務の許可方針に対しては日本代表団は欧米の意向でアマチュア業務の不許可は争えないため以下のようにアマチュア業務の周波数の大幅削減の条件闘争とし国内分配権は各国政府にあることを確認したことが公式議事録に残っている。(注2) 、(注6)

ーアマチュア帯域についての日本代表の言動記録ー

1.93.5MHzバンドが固定局、移動局およびアマチュア局の3者共用とする原案は、1927119日午後2時から開催された第10回技術委員会(フェリエ将軍議長)において提案されています。この時初めて波長200m以下の短波帯の周波数帯域割り当て案が事務局から提示されました。

すかさず、日本代表が、「アマチュア局への割り当てバンドが多すぎる。みなおせ。」
と噛みついています。これに対して、欧米代表、特にアメリカ代表がやんわりと、「あ
なたの国ではあなたの国でいいように割り当てればいいんですよ。この周波数割り当て
原案に示されているアマチュア局への割り当て案は「最大のもの」ですから(訳者注(
想像):アマチュア局が貴国にあまりいないのなら端から端まで全部のバンド幅を使わ
せないでいいのですから。あなたのところで適当に制限してしまえばいいだけです。)
」と答えています。
10回技術委員会での日本代表団の発言のやり取り

 

ー7MHz帯以上のアマチュアバンドが専用割当の経緯ー
その他の7MHz帯以上の周波数帯はまだだれも反復継続的には使ってなかったため、
すべてのバンド幅がアマチュア専用とされたようです。

ー1.8MHz帯と3.5MHz帯の3業務共用についての各国議論ー
同じ119日に、この短波帯割り当て案を受け取った技術委員会第1分科会において、こ1.93.5MHzバンドの3者共用についてかなりしっかりした議論が交わされています。まず、ベルギー代表が「共用などにしたら小さな漁船の通信がアマチュア局からの混信で使用できなくなってしまう。固定通信、移動通信とアマチュア無線に対してそれぞれ別の周波数を決めて、混信をさけるべきだ。」と発言しています(議事録p.565)。この発言について、各国から賛否両論がでましたが、アメリカとイギリス代表が「柔軟に各国政府が対応できるので、3者共用としていても問題は生じない。」と答えて、終的に原案のまま、1.93.5MHzバンドの3者共用案が修正なしに採択されています。

技術委員会の第1分科会は海軍の西崎氏で第2分科会は逓信省の中上氏である。第1分科会の所掌は「私設実験局、アマチュアの定義、周波数割当」でありアマチュアを含む周波数の割当は海軍が主導していたのがわかる。また、アマチュア業務への国際的な周波数確保が会議の最大の関心事であった米国代表(注5)までが日本の孤立政策を容認したのは欧米が極東の電波政策に関心がなかったことがわかる。

注目すべきはワシントン会議での日本代表団の「主要参加国から国際分配順守せずへの同意の言質を取った」行動と7.項で述べられている陸・海・逓 三省会議の結論「ワシントン会議までに研究しよう」との乖離である。順当に考えれば「ワシントン会議までに研究しよう」の結論は「ワシントン会議で主要参加国から国際分配順守せずへの同意の言質を取ろう」であり「戦前の電波政策はアマチュア業務に関して国際分配を順守せず日本代表の支配地域では独自に制限する」であったことがわかる。このような経緯になった遠因は実は日本のアマチュアが代表メンバーにアマチュアの利益代表を出す努力が少なかった自責と理解している。もし、出席していれば事前に日本代表の発言自体を制止できたしもし発言があっても米国の代表は日本のアマチュア代表に発言するよう促すことは国際会議の議論の慣行である。

以上の経緯でワシントン会議の結果を受けて7.項で示したように陸・海・逓 三省会議はJARL結成の1年後の1927年に1.775kHz,および3.550kHz等のの単一周波数分配を決めて国内でアマチュア業務が認められたことになる。(注

9.戦後の電波政策:

GHQの民間通信局(CCS)は、逓信省無線電信法を新しく公布される日本国憲法に沿った民主的な法律に改正するよう要求し電波監理委員会RRCが設立された。その後1952年に、日本の主権が回復すると、電波監理審議会が設置され、郵政大臣(現総務大臣)の諮問に対する答申と勧告、電波法及び放送法に基づく処分に対する不服申立てについて審査及び議決を行うとされ、準司法権の機能が残された。これによりアマチュア業務の電波政策は戦前の軍部の介入がなくなり郵政大臣(現総務大臣)のみが所掌となった。(注3)

1952年に国際割り当て原則に準拠した戦後初のアマチュア業務の周波数割当が行られてすべて単一周波数から帯域割当となり3.5MHz帯では3500-3575kHzが割当の免許方針が示されたが1.8MHzの割当はなかった。この中で現実問題としては実際にアマチュアに割当てが可能な周波数を別途とり決める必要があり」実際の運用周波数には3.5MHz帯はなかった。(注3)

1952年8月号のJARL NEWS No.135の「電波管理総局との交渉経緯」は具体的な割り当てをアマチュア側から記述している点で興味深い。


3.5MHz帯は

1.現在3500-3575KHzは主として警察に割り当ていることから現在は1から2程度のスポットでしか割り当てられない。

2.1953年3月以降は次第に移って3500-3575kHzは確保される見込みである。

3.これはアトランテックシティー会議の第3地域内の3900kHzまでの割り当てに対して第3地域の主管庁会議(現在のITU-3 Asia Pacific Region)で日本は3575kHzまでと決まっている。

このように戦後の民主的な電波政策によりアマチュア業務は他業務に対して市民権を獲得したが、郵政省が許認可権で免許期限でもって現行の周波数割り当てを解消し他の周波数に移行させ得る民間局とは異なり最も重要度の高い自衛隊、警察、運輸、気象などのいわゆる公共無線局によりにもよって割り当ててしまったため周波数移行に関しては大蔵省が予算処置を認めない限り周波数移行は現実的できない。このため郵政省にとっては戦前の電波政策による特異な周波数割り当てを国際的整合性を持たせるにはこれらの無線局を所有する省庁が廃止の意向を示し免許を自主返納するのを待つしかないことになる(FT8運用周波数の3.576MHzの自衛隊によるCW局廃止は好例)。この事情が戦後75年を経ても未だに全面開放にならない所以である。

10.周波数再編プランについて

3G携帯電話、無線LANの周波数のひっ迫を契機として公共利用優先から民間利用を公平に扱う新たな電波政策として周波数再編アクションプランが電波部電波政策課で平成16年から実施された(注7)。このプランは具体的な周波数再編を円滑かつ着実にフォローアップするるために策定され再編の仕組みをオープンにするため国民に毎年改定公開されている。この課題にあげられた課題には携帯電話の800MHz帯の再編、地デジ化の跡地周波数の利用、4G、5G用の周波数確保等でありこれらは電波政策の最優先課題に挙げられている。FT8運用周波数の開放にあたって「今後取り組むべき課題」に記載されたがこれがアマチュアに関して初めての議題であった。この際共用業務はそのまま割当を継続して二次的基礎ではあるがアマチュア業務を追加して国際的な割当原則により近くしたことは従来の移行完了まで待つ政策よりは積極的であったと評価できる。しかしながらFT8運用周波数の開放に当たって周波数再編アクションプランで新たに認められた公共用無線局の移行に関して各種のインセンティブ(電波利用料の活用)を用いることと周波数利用効率の高い技術への移行方策を取らない公共無線局には電波利用料を徴収するより積極的な「アメとムチ」手法を取るとの記載はなかった。

11.FT8の周波数追加と周波数再編プランとの関係とその教訓

2.項に記載されているように2020年の1.8MHz帯と3.5MHz帯の周波数追加理由は

1)2019年に今後の取り組むべき課題に採用された経緯に基づくものでこれは意見募集過程で日本の局は海外局との交信には送信と受信の周波数を変えるスプリット通信を余儀なくされていることの指摘に対するアマチュア局の国際的使用周波数の調和を考慮したものである。

2)周波数の追加は既存無線局の周波数使用状況と使用条件による

と述べている。

次に2020年の周波数追加が行われた後に今後の取り組むべき課題から削除された理由を問う質問に対しては

3)令和2年4月に現状割当可能な周波数を追加で割り当てる制度整備を行ったこと

4)今後の周波数割当については、アマチュア局の開設・運用状況をはじめ、既存無線局の利用状況を考慮しながら、引き続き検討する

と回答している。(注8)

12.具体的なIARU第3地域バンドプランとの整合性

1.8MHz帯と3.5MHz帯のIARU第3地域のバンドプランを以下に示す。この中で現状の国内周波数割当表との関係において実現できない部分を手書きの青線で示してある。赤字は断片的に細分化された現状の周波数帯域である。今回解決したFT8以外の多くのIARU第3地域の指定運用周波数が使えないなど国際的な整合性は保たれていない。





以上から通常以上に進捗速度を加速させるには「アマチュア局の開設・運用状況」の問題点を具体的に提示し今後の取り組み課題に採用される継続的な努力が必要である。

13.アマチュア業務と共存できない既存局(気象FAXなどの同報業務)の具体的な対応

従来の500kHz付近で運用しているNAVTEXの近代化がWRC-19においてNAVDATAとして検討されておりこの際サービスの一つとしてFAXが記載されておりかつ運用周波数にアマチュア帯を外したHF帯が審議結果に記載していることが分かったが総務省の原案にはこのHF帯が割当計画に入っていないことから9月15日に以下の意見を送った。

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「周波数割当計画の作成案に係る意見募集」に関し、別紙のとおり意見を提出します。

 

1415-526.5kHz帯におけるNAVDAT用周波数の分配(議題1.8関連)として「415- 526.5kHz帯がNAVDAT用として国際分配されました。これを受けて、同周波数帯における 国内分配の変更を行うもの」とのことですがWRC-19においては4MHz-27.5MHzが7年前のWRC-12の決議の415-526.5kHzとともにNAVDATに追加されています。よって4MHz―27.5MHzの国内分配に関する周波数割り当て計画をお知らせください。なおご回答に当たって以下の観点への回答を含んでいただけるようお願い申し上げます。

ITUNAVDATのガイドラインのメッセージ種類は従来のNAVTEXの気象警報に加えて気象予報(=気象FAX)が加えられてかつ運用周波数は415-528.5kHzと海上移動業務割当の4MHz-27.5MHzとなっています。これに対して現行気象FAXの運用周波数は日本と韓国以外はアマチュア業務の3.5MHz帯の周波数は外しています。この理由は第一次世界大戦後の1927年国際無線電信会議(日本代表は朝鮮代表を兼務)でアマチュア業務に対しての国際的な割り当て原則は7MHz帯以上を専用割り当てとしたが当時比較的重要であった1.8MHz-2.0MHz帯と3.5MHz―4.0MHz帯は移動および固定業務(放送業務は含まれず)と共用としており以来この原則が維持されて現在に至っています、これにより諸外国では気象FAXは放送型で混信を回避できないことからこの帯域から外したものと理解しています。これに対して、日本と韓国は気象FAX(日本では特別業務局(=放送に類似した同報通信)の気象通報用無線で公共業務用無線局に分類)を専用割り当てとしJMH=3622.5kHz(日本)とHLL2=3585kHz(韓国)付近でアマチュア業務を排除する独自の国内割り当て方針を第二次世界大戦後続けています。以上から今回のWRC-19の議決を契機として1.8MHz帯と3.5MHz帯の国内割り当て方針に関しては「移動・固定業務の帯域共用」という国際的原則を尊守することを希望します。

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上記の意見に対して10月12日に以下の回答があり原案を意見通り修正するとの回答があった。(注9)

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ご意見を踏まえ、別表3-3(4- 25MHz帯海上移動業務(データ伝 送)の周波数表)に以下の脚注を追加いたします。

6 本表に記載のない周波数帯のう ち4221-4231kHz、6332.5-6342.5 kHz、8438-8448 kHz、12658.5- 12668.5kHz、16904.5-16914.5kHz及 び22445.5-22455.5kHzは、NAVDAT送 信局が最新版のITU-R勧告M.2058に従って運用される海岸局であることを条件にNAVDATシステムに使用することができる。

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「回答に当たって小生記載の「意見を踏まえた」とのことなので「今回のWRC-19の議決を契機として1.8MHz帯と3.5MHz帯の国内割り当て方針に関してはアマチュア業務と移動・固定業務の帯域共用という国際的原則を尊守し放送型で混信を回避できない気象FAXはこの帯域から外す」ことは聞き置き「現行気象FAXの後継としてのITU標準NAVDATはこのアマチュア帯域を外した周波数を脚注で指定する」と回答したと理解している。

14.まとめ

以上の研究のまとめとして下記の意見を総務省に提出した。今後の展開を注視したい。

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「周波数再編アクションプラン(令和2年度第2次改定版)(案)」に関し、別紙の

とおり意見を提出します。

別紙

「該当箇所」:

第4章 各周波数区分の再編方針 I 335.4MHz 以下 今後取り組むべき課題

「意見」:

周波数再編アクションプラン(令和元年度改定版)の今後取り組むべき課題として「アマチュア局が動作することを許される周波数帯(バンドプラン)のうちMF帯について、既存の業務用無線の動向等を踏まえ、バンドプラン等の見直しの可能性につい て、令和元年度に検討を開始する」が削除された質問への回答は

「アマチュア無線の MF 帯の利用拡大について は、令和2年4月に現状割当可能な周波数を追加で割り当てる制度整備を行ったことから、記載を削除したところです。 今後の周波数割当については、アマチュア局の開設・運用状況をはじめ、既存無線局の利用状況を考慮しながら、引き続き検討してまいります」

とある。

この帯域の周波数割り当て状況とその歴史を調査した結果以下のことが分かった。

1)この帯域の国内周波数割り当て電波政策は1927年のワシントン会議の朝鮮代表を兼る日本代表団の「アマチュア局への割り当てバンドが多すぎる。みなおせ」の発言にある。

2)戦前の日本と朝鮮の電波政策は各帯域一波の割り当ては終戦まで維持された。

3)戦後の新たな電波政策で国際割当と整合性を持たせるために帯域割り当てとしたが戦前の電波政策に起因する既存無線局の存在から現在においても進捗率は40%台(1.8MHz帯40%、3.5MHz帯43%)にとどまっている。

4)一方韓国においてはこの進捗率は約15%にとどまっている。この違いは日本における周波数拡大に対する戦後の電波政策とこれを支える多数のアマチュア(日本40万局、韓国4万局)のたゆまぬ後力が一因と考えられる。

5)アマチュア局の開設・運用状況は世界の3割を占める40万局のアマチュアにとって1.8MHz帯と3.5MHz帯の利用可能な帯域は諸外国に比べて40%台と狭く、国内アマチュア局間の混信は常態化し、狭帯域デジタル通信の運用周波数の国際的整合性は令和2年4月の周波数追加で解決したがいまだ国際的なデジタル音声通信、アナログ音声通信、ペディション・コンテストなどの催しの運用周波数が利用できないなどIARUバンドプランとの不整合状況は続いている。また細分化された帯域のためオフバンド運用を誘発し運用停止処分の要因の一つとなっている。これらのことが近年の日本のアマチュア人口の減少の一因となっており1927年のワシントン会議以来世界のアマチュアが担ったMF帯の利用技術開発への貢献への阻害要因となっている。

以上から現状の既存無線局の利用状況を考慮する現状の電波政策を維持しても進捗率100%を達成する期限は確定できない。よってより積極的な電波政策として「今後取り組むべき課題」に取り上げ100%の達成期限を明示し国際割当に従ってアマチュア業務を一次的基礎として他業務(例えばラジオブイ、船舶局)との共用利用を促進しアマチュア業務と共存できない既存局(例えば気象FAXなどの同報業務)に対してはアマチュアが負担する電波利用料をインセンティブとして他帯域への移転費用に充てることを提案する。

電波政策課担当様へ:上記の「この帯域の周波数割り当て状況とその歴史を調査した結果」の詳細は「1.8MHz帯と3.5MHz帯の電波政策の研究と周波数再編アクションプランへの提案」(https://playredpitaya.blogspot.com/2020/09/mh.html)にまとめてあります。ご回答を頂くにあたって参考にしてください。

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14.総務省の回答
総務省の回答は2020年11月13日付(116番)で発表されている。回答は前年と変わらない「今後の周波数割当については、アマチュア局の開設・運用状況をはじめ、既存無線の利用状況を考慮しながら、引き続き検討して参ります。頂いたご意見については、今後の施策の検討の際に参考とさせていただきます。」となっている。

しかしながら「歴史調査」には特に反論ないためこれは受け入れられたものと理解している。また今回の改正の主眼がWRC-20の反映であったにも関わらず、1.8MHzと3.5MHzのさらなる開放はJARLを初めとして全部で4件出されておりかつ個々の意見の内容も深化しており担当の電波政策課も今後無視できないのではないかと考えている。

周波数再編アクションプランは毎年改定されており、特に来年2021年の改定の主な対象に1.8MHzと3.5MHz帯が含まれるので、多くのアマチュア局からJARL結成100周年とワシントン会議100周年にあたる2026年から2027年までにと開放期限を切った重点政策として今後取り組むべき課題に取り上げるべき」との意見が出されることを期待している。

15.参考文献
本ブログ作成に当たって参考にさせて頂いた文献を以下に掲げます。貴重なご情報・意見を頂いた著者等に深く感謝します。

(注6)中野 幸紀氏私信(Documents de la Conférence radiotélégraphique internationale (Washington, 1927): Tome IIの調査結果。Tome IIは注2のサイトのConference Documentsのページに収録されている。)

(10月18日: 12項および13項を追記)
(12月2日:14項項を追記)
(1月12日:「1952年8月号のJARL NEWS No.135の「電波管理総局との交渉経緯」は具体的な割り当てとJARL結成100周年とワシントン会議100周年にあたる2026年から2027年までにと開放期限を切った」を追加。

16.「令和2年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」へ以下の意見提出

「気象通報用無線(特別業務の局)HF」が何ら調査項目に挙げられず評価結果において一言も言及されていない理由をお聞かせください。
 
1. 気象通報用無線(特別業務の局)の運用周波数3622.5kHz, 7795.0kHz, 133.988.5kHzのうち3622.5kHzはアマチュア無線業務の3.5/3.8MHz帯の中で共存が困難な既存無線局であり周波数再編アクションプラン意見募集結果(令和2年112月13日)において「今後(3.5/3.8MHz帯の帯域)の周波数割当については、アマチュア局の開設・運用状況をはじめ、既存無線の利用状況を考慮しながら、引き続き検討して参ります。」とあり調査状況が言及されるべきと考えている。これは重点調査対象の要件の「2.周波数再編アクションプランにおいて対応が求められている電波利用システム」に合致していると理解している。

2. 「周波数割当計画の作成案に対する意見募集の結果及び電波監理審議会からの答申」(令和2年10月12日)において気象通報用無線の新システムNAVTATが別表別表3-3(4- 25MHz帯海上移動業務(データ伝 送)の周波数表)に追加された。これは重点調査対象の要件の「4.周波数割当てに関する国際的動向その他の事情を考慮し周波数の再編に関する検討が必要な電波利用システム」に合致していると理解している。

以上

(2021年6月8日記)

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「周波数再編アクションプラン(令和3年度版)(案)」に関して以下の意見を9月17日付で提出した。

別紙

 

 

該当箇所(ページ番号、項目等

第3章 重点取組

1.公共業務用周波数の有効利用の促進

表1 他用途での需要が顕在化している周波数を使用するシステム

表2  アナログ方式を用いるシステム

 

意見

表1および表2の中に気象庁の「気象無線模写(=気象FAX)」が記載されていない。以下に述べているように表に既に記載されているシステムと同様に重点取組の要件(参照2)を満たしていると理解している。よって表1および表2に「気象無線模写」を追加して頂きたい。

気象庁の現行気象無線模写システムは100年の歴史をもつ最古のアナログ狭帯域方式の気象FAX専用システムである。使用している3.5MHz帯は「アマチュア業務用途の需要が顕在化している国際割当原則に基づいた共用周波数帯」でありこれを気象無線模写システムは排他的に占有している。一方NAVDATは現行GMDSSのNAVTEXの近代化として広帯域デジタル方式として開発されてサービスメニューに「気象予報(=気象FAX)」が含まれており、2018年にITUで標準化されかつWRC-19に基づき4-25MHz帯海上移動業務の周波数が分配されていることから代替えシステム(参照1)と位置付けられている。よって気象庁の「気象無線模写」は「多用途での需要が顕在化している周波数を使用するシステム」でありかつ「アナログ方式を用いるシステム」であることから、「デジタル方式のNAVDATの導入に向けた技術的条件」と「NAVDATでの代替え可能性」に関して「重要取組」として検討することを提案する。

参照1.周波数割当計画の作成案に係る意見募集に対して提出された意見と総務省の考え方(案)(意見募集期間:令和2年8月15日~同年9月18日) 意見No.1およびNo.2

参照2.令和2年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対して提出された意見及び総務省の考え方 意見No.8

 

該当箇所(ページ番号、項目等)

第4章 各周波数区分の再編方針 

I 335.4MHz 以下 

今後取り組むべき課題

 

意見

周波数再編アクションプラン(令和元年度改定版)の今後取り組むべき課題として「アマチュア局が動作することを許される周波数帯(バンドプラン)のうちMF帯について、既存の業務用無線の動向等を踏まえ、バンドプラン等の見直しの可能性につい て、令和元年度に検討を開始する」が削除された質問への回答は「アマチュア無線の MF 帯の利用拡大について は、令和2年4月に現状割当可能な周波数を追加で割り当てる制度整備を行ったことから、記載を削除したところです。 今後の周波数割当については、アマチュア局の開設・運用状況をはじめ、既存無線局の利用状況を考慮しながら、引き続き検討してまいります」とある。このような検討方針では、世界の3割を占める40万の国内アマチュア局にとって1.8MHz帯と3.5MHz帯の利用可能な帯域は諸外国に比べて40%台と狭く、国内アマチュア局間の混信は常態化しいまだ国際的なデジタル音声通信、アナログ音声通信、ペディション・コンテストなどの催しの運用周波数が利用できない状態が続くことになる。よってより積極的な電波政策として再度「今後取り組むべき課題」に取り上げて頂きたい。

この際、2027年を100%達成期限とし国際割当に従ってアマチュア業務を一次的基礎として他業務(例えばラジオブイ、船舶局)との共用利用としアマチュア業務と共存できない既存局(例えば気象FAXなどの同報業務)に対してはアマチュアが負担する電波利用料をインセンティブとして他帯域または他の代替えシステムへの移転費用に充てることを提案する。達成期限の2027年は「アマチュア業務を一次的基礎として他業務との共用利用」の国際割当原則を決定したIRC(ワシントンDC会議)開催100周年でありアマチュア業務への電波割当を目的に結成されたJARLの結成100周年でもあることを根拠としている。

参照3.「周波数再編アクションプラン(令和2年度第2次改定版)(案)」に対する意見募集の結果及び意見に対する考え方 [募集期間:令和2年9月 10 日(木)~10 月9日(金)]意見No.116

(2021年9月25日記)

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