7041問題はOLIVIAの電波戦争とIARUへの対案

1.はじめに

2021年9月23日付のARRL Letterの「IARU Region 3 Considers Significant Expansion of HF Digital Segments」に載ったIARUの新たなバンドプランの陰に隠された

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relocation of Japan's domestic 40-meter FT8 frequency from 7041 to 7037 kHz (dial) to provide for a global narrowband conversational modes (e.g., PSK) segment between 7040 and 7044 kHz in alignment with existing Region 1 arrangements to replace the 7070 - 7074 kHz segment in Region 2

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がありこれに対してJARLは2021年末に

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7MHz帯FT8での国内局同士の運用周波数について 

-ご協力のお願い-

 2021年9月20日から22日までの間に開催されたIARU第3地域総会において、7MHz帯のデジタルモード用帯域についての検討が行われ、日本国内局同士のFT8による運用周波数については、7030-7040kHzの帯域への移動を検討するように求められています。

 総務省の使用区別を定める告示やJARLのアマチュアバンドプランでは、デジタルモードでの運用周波数は7030-7045kHzと定められており、各デジタルモードの運用周波数についての詳細な取り決め等はありませんが、現在、7040kHz以上の周波数で、諸外国では対話型のデジタルモード(PSK、Olivia、RTTYなど)の運用が主流となっており、この周波数での日本国内同士のFT8による交信についてバンドプランの国際標準化への協力のために運用周波数の変更が求められております。

 つきましては、今後、国内局同士のFT8による運用については、7030-7040kHz(キャリア周波数 7030-7037kHz)の帯域での運用とするように、デジタル通信をご利用の皆様にはご理解のうえ、ご協力いただきますようお願いいたします。

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と対応しています。

IARUの新たなバンドプランは具体的な策定日程が示されない状況でwsjt-develで小生の質問に策定に係るIARU R3の一人は小生へ「きわめて初期段階」とコメントをしている中でARRLとJARLが混乱を引き起こした「7041問題」の背景を調べた結果と小生が考えているIARUへの対案を以下に示します。下図の「40m Counter Proposal」です。詳細は4項の説明を読んでください。


IARUへの対案


2.OLIVIAの電波戦争の経緯

今回の所謂7041問題は3.5MHz帯のオフバンド問題の解決で直接関与した者にとっても「なんの話?」と唖然とする提案でネットの解説を読んでも納得がいかなかったのですが、PSK, OLIVIAのキーで検索してようやく「ああそうなの、でもこんなことやるとIARUの担当は利益相反で倫理規定に引っかかるだろうし我々はトバッチリを受けたの?」と思うような情報を見つけました。今回の出来事はOLIVIAのまとめ役兼ロビイスト的役割のNW7USが自作自演のIARUを舞台にしたOLIVIAが仕掛けた電波戦争です。彼が書いた記事の中にはIARUのR1 HF ManagerであるDF5JLがFT8の14.074MHzでのOLIVIAの周波数とのバッテングにOLIVIAのためにエーゼント役で介入に乗り出すとのポストが張り付けられています。面白いのはOLIVIAの新たな周波数案が2020年の5月4日に出されておりここで7.04MHzに世界的に移行が提案されて今年の1月21日付でこの周波数が正式な周波数になっています。聞かされているIARUの検討時期とぴったり一致しています。

https://www.amateurradio.com/land-er-frequency-grab/

https://groups.io/g/Olivia

唖然とさせたARRLのニュースレターの中の“in alignment with existing Region 1 arrangements and as a replacement for the region 2 7070-7074 kHz segment)”はOLIVIAの従来運用周波数であるR2の7.073.25付近からR1の7.043.25付近に変更することを意味していることが判ります。これでこのニュースレターはNW7USの意を受けてIARU R3の会議に参加したARRLはJARLに対して7037への移行を要求したことをNW7USに公に報告したのです。

OLIVIAのHF Linkにある従来運用周波数

NW7USの2020年5月4日のGroup.ioでの提案
(7.0400MHzをセンターにしてWSPRと重なっている)

OUR CURRENT (2020 - MAY) SUGGESTED OLIVIA CALLING AND LISTENING FREQUENCIES

CENTER       DIAL        Tones/Bandwidth (Notes)

 1.8390 MHz   1.8375 MHz  8/250 (ITU Region 1, etc.; Primary International)
 1.8270 MHz   1.8255 MHz  8/250 (ITU Region 2; Secondary)
 3.5830 MHz   3.5815 MHz  8/250
 7.0400 MHz   7.0385 MHz  8/250 (ITU Region 2, etc., Primary International)
 7.0730 MHz   7.0715 MHz  8/250 (Secondary)
10.1430 MHz  10.1415 MHz  8/250, 
10.1440 MHz  10.1425 MHz 16/1000 (Potential - be mindful of other stations)
14.0730 MHz  14.0715 MHz  8/250
14.1075 MHz  14.1060 MHz 32/1000
18.1030 MHz  18.1015 MHz  8/250
21.0730 MHz  21.0715 MHz  8/250
24.9230 MHz  24.9215 MHz  8/250
28.1230 MHz  28.1215 MHz  8/250

AC0AEの2022年1月21日の提案Groups.ioでの提案(7.0405MHzをセンターにしてWSPRの重なりを回避している)
CENTER    |     DIAL       Tones/Bandwidth        (Notes)
 1.8390 MHz    |    1.8375 MHz   8/250    (ITU Region 1, etc.; Primary International)
 1.8270 MHz    |    1.8255 MHz   8/250    (ITU Region 2; Secondary)
 3.5830 MHz    |    3.5815 MHz   8/250
 7.0405 MHz    |    7.0390 MHz   8/250    (ITU Region 2, etc., Primary International)
 7.0730 MHz    |    7.0715 MHz   8/250    (Secondary)
10.1430 MHz    |   10.1415 MHz   8/250
14.0730 MHz    |   14.0715 MHz   8/250
14.1075 MHz    |   14.1060 MHz  32/1000
18.1030 MHz    |   18.1015 MHz   8/250
21.0730 MHz    |   21.0715 MHz   8/250
24.9230 MHz    |   24.9215 MHz   8/250
28.1230 MHz    |   28.1215 MHz   8/250

電波戦争とは大げさなと思われる方へ一例をお見せしましょう。これは同じGroups.ioでもWSJTXの中でJoe Taylorが2020年6月7日にK5WDSに宛てたメモです。

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Hi Rory,

Yes.  Did you read the Release Notes for WSJT-X 2.2.0-rc1

Versions 2.2.0-rc1, -rc2, and -rc3 all had built-in alternate frequencies for FT8 on the 40, 30, 20, and 6 meter bands.  These trial frequencies were not much used,  but the suggestion that these frequencies might be used for FT8 provoked predictable responses from users of other modes that habitually use those frequencies. 

-- 73, Joe, K1JT

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上記のメモに反応して、同じ日付でNW7USがOliviaのGroups.ioに「[Special] [Olivia] So far, we are winning... but this issue is NOT over! #OliviaQRM #bandplan」タイトルで上記の"provoked predictable responses"に赤を入れてJoeのメモの画像コピーを付けて

Below is a screen capture of a message posted by Joe Taylor (the guy behind the FT8 digital mode), regarding the push-back from us and other digital groups.  Note the attitude.  And, note the audacity regarding provoking a response.

We are working with IARU members to draft our thoughts on band plans.

Our voice matters.  We must work toward a unified approach, and work with others, to come up with modern GENTLEMEN's AGREEMENTS.

I use "GENTLEMEN" in a historic sense - not as a male trying to make any point about gender.  I don't have a better word.
--

73 de Tomas, NW7US dit dit

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とIARUに上げた紳士協定(追記2を参照)をめぐって同じ米国人の2人が演説しています。Joeは首都とニューヨークの間にある片田舎Princetonの講堂で「慣習的に利用している周波数の他のモードの利用者の予想可能な対応で挑発されFT8の代替えの周波数に使えばどうかとの勧告を受けて。。。」と(NW7USにはよっぽど気に入らないのか傲慢と映るのだろう)外交的表現で、それに対してNW7USはトウモロコシ畑の教会で「これは我がデジタルモードの反撃に対するFT8デジタルモードの背後にいる男Joe Tylorのメモの写しである。彼の姿勢を記憶せよ。我が対応を挑発する大胆不敵さを記憶せよ。」とそして「我々の声には価値がある。メンバーは一致団結してOLIVIAの考えが入ったバンドプランをIARUメンバーと一緒に作っている」と不平等を訴える黒人運動家が使う用語を使って足を踏み鳴らして扇動しています。

上記のやり取りを見てまだ電波戦争とは大げさですか?

以上からこの電波戦争の全体構図は

NW7US―>ARRL―>IARU R2―>IARU R1―>IARU R3―>JARL―>JAユーザー

です。

これは正しい戦争なのかとの疑問は起きませんか?正悪の基準は自分の幸せだけでなく相手の幸せを考えているかどうかです。Oliviaのgroup.ioを読めばこの戦争に巻き込まれたIARUの関係者の一人は正しいものにするための努力はしています。例えばOLIVIAは空いているJAの国内QSOの上を使えばどうかなどです。

IARUのバンドプランでは「脚注削除を勧告」としそれができないなら「3037への移行を代案」としているのに、なぜかARRLの要求には脚注削除が含まれず3037移行のみとなっています。これはNW7USがトウモロコシ畑にいるためインデアンを追い払う手法を好んだのか、JARLのIARU代表団が告示改正が絡む脚注削除提案は国内周波数委員会の所掌でありこれは我々に全権委任されていないとか何とか言って脚注削除提案に難色を示して現行JARLのバンドプランと整合性を持つ7.037kHzへの移行提案を承諾したのでしょう。これなら周波数委員会を開催せずにスルーできるというJARLの都合でIARUの世界統一バンドプランからJAのみ取り残されることになったと推理しています。

それで1月以降JAユーザーが7037に移行しないのでARRLは怒っているとのうわさを聞きましたが、それはJARLが「各デジタルモードの運用周波数についての詳細な取り決め等はありません」と伝統的紳士協定の解釈に立脚している限り「ご協力のお願い」としか言いようがないしこれにNW7USもARRLも何の手も打てないから仕方ないのです。

結論として、この悪い戦争をいったん停戦させるためにARRLはJARLへの要求を取り下げNW7USをIARUの将来のバンドプランの議論から排除させJAからの対案を審議すべきと思っています。もしARRLが移行要求を取り下げに応じないなら我々は総務省に保護されている7041にいればよいだけです。

3.OLIVIAの電波戦争のまとめ

上記のようにIARUの新たなバンドプランに隠された思惑を「OLIVIAの電波戦争」と推理してみました。もちろんOLIVIAのGroup.ioを読めば直接の戦争相手はWSJTでありこのDefaut周波数をめぐる抗争はIARUの新バンドプラン検討以前に起きていたことですがOLIVIAがWSJTに負けて自分で解決できないのでこれをIARUに持ち込んでIARUが新バンドプランの議題に組み込んでしまったためにJARLがスルーしてJAユーザーに砲弾が飛んできたのが真相と推理しました。

それも我々にとって死んだも同然の帯域幅2700HzのシングルキャリアのOLIVIAに我々の先祖伝来の狭帯域デジタルのバンドを明け渡せというのですから。よくみれば2700Hzの本命であるOFDM変調のDigital Voiceに5kHzしか分割割当てないのは何を考えているのという声が聞こえますがこの指摘はよくわかります。

そこにARRLの支配下にあるIARUでの横暴が見えて所謂「無理筋またはすじの悪い提案」に写ってしまいますし1項で書いたように「策定に係るIARU R3の一人は小生へ「きわめて初期段階」とコメント」は本音で、世界統一バンド作成の名で起こっている戦争をいったんリセットさせるのが将来のためによいと思っています。

なぜこの戦争にJAユーザーが気付かなかったのか今考えてみると2020年4月21日に1.8MHzと3.5MHzのバンド拡張がありJAはこれに湧き上がっていてFT8の細かな周波数の変更の裏にこの戦争があることに気付かなかったのではないかと思っています。またJAではほとんど使われていないOLIVIAが仕掛けたのでトウモロコシ畑で何が起きていたのか知る由もなかったのかもしれません。

蛇足ですが、2.項に書いたように「ネットの解説」を書いたり拡散された方は小生の推理を検証して、さて自分の解説と対応方法が果たして合理性があったのかをご自身で検証することをお勧めします。

ARRL Letter で教えられた小生にとって最も興味のあるテーマである80mのHLLとJMHの問題を指摘したIARUの新バンドプランを実りあるものにするためにいわゆる7041問題に関して調べた結果を以上にまとめてみました。

4.IARUへの対案の詳細説明


40mのIARUのバンドプラン案


40mのIARUのバンドプラン案の基本はOLIVIA PSKに20kHzをWSJTに15kHzずつ割り当てています。OLIVIAが7070をめぐってWSJTに敗退したのでDataの部分では帯域幅の広い2700Hzが下に配置されるいびつな配置になっています。WSJT側にとってこのバンドプランに移行するには現行のFT4のdefault QRG7.0475MHzは7.065MHz以上に移行しなければなりません。これをやめて7.5kHz下げてQRGをJAのデータ帯域内の7.040MHzに変えるだけですべての問題が解決することを示したのが1.項の図「IARUへの対案」です。

この対案で

  • JAユーザーは国内通信ではFT4を使うことになりますが、近隣の海外ともに同じ周波数でアクセスでき大変便利になります。約3dB感度が悪くなりますが近距通信では悪影響はありませんしQSOが2.5倍高速になるメリットが大きいでしょう。7.074のFT8は今まで通りDX用として使えます。これは近距離は高速で遠距離では低速で通信する携帯・無線LANでは周波数有効利用の観点から常識の通信方式をJS8Callに続いてWSJTも採用することを意味します。FT8のQRMを緩和してくれます。FT8で国内通信を是が非でも行いたいユーザーは現行JARLバンドプランの7.030~7.040MHzを使えば国内的には何の問題ありません。これは3.5MHz帯で現在の3.520~3.535MHzの使い方と同じです。
  • JARLにとってはJAのみが取り残されるバンドプランの策定を回避でき総務省への脚注削除の交渉に時間的な余裕ができます。今回7037移行にCWコンテスト関係者に不満があるようですがこれも収まります。
  • FT4の海外ユーザーにとってはわずか7.5kHz下がっただけですから現状と変わらないので大きなデメリットはありません。海外ではFT4をFT8のQRM回避法として利活用する提案としてメリットが大きいと思います。コンテスト用途としてFT4が開発されたことでコンテスト時RTTYのバッテングが心配だと難色を示すかもしれませんがRTTYは過去のフォーマットとしてコンテストから削除するのがコンテスト委員会の責務でしょう。是が非でも別のFT4周波数が必要なら7.068MHz以上(または現行JARLバンドプランの7.030MHzから7.040MHz をデータとCWとの共用周波数としてIARUに提案してここをコンテスト用に使えばよい) の空いている周波数でやればよいのです。
  • OLIVIAはFT4が下に移ってくれたので7.043MHzから7.068MHzまで自由に使えてJAが7.043MHzから7.045MHzでOLIVIAを使ってくれればJAのユーザーが増えて悪い話ではありません。OLIVIA側もJAの存在の回避にこのような案を過去に考えていたようですがFT4が7.0475MHzにいる限り帯域が2.5kHzしかなくどこかに行ってしまったようです。
  • IARUの現状新バンドプランでもWSPRは7.040MHzにいるのでWSJT系はすべて7.065MHz以上との謳い文句は実現していないのです。元々WSPRが分割配置されていたのでこれが0.2kHzから3kHzになっただけです。
  • ならば問題山積のバンドプランなのでFT4のQRG7.040MHzも認めて新プランに入れるとWSJTにIARUが確約すればWSJT側はFT4の7.040への移行を了承します。これは小生の提案でWSJTが3.5MHzでのオフバンド問題の解決に取った手法で実績ありです。

しかし、JARLはJAユーザーが攻撃されているのを知っているにも関わらず、伝統的紳士協定の解釈に立脚して非介入の立場を貫いたメンツでこの対案の提出を渋り、ARRLはOLIVIAとの約束の実行のためにJAの国内周波数の明け渡し要求にこだわり、IARUは2年かけて作った現状のプランにこだわる限り小生の案は葬りさられると思っています。

(2022年2月11日記)

追記1:3.5MHzではFT4にとっては脚注なしの環境が既に実現しています。現在国内QRGはFT8の3.531MHzです。一方FT8のdefault周波数は3.573MHzでFT4は3.575MHzです。この3.575MHzは2020年の開放時のJARLバンドプラン改正で「外国のアマチュア局に限る」の脚注をかけなかったので国内通信もFT4を使えば国内QRGはいらなくなりこれをCWに明け渡せば周波数の有効利用に貢献します。この考えをIARUのバンドプラン改正をチャンスとして7MHzにも適用しますと説明すればご理解が早いかと思います。7MHzでは明け渡す周波数はSSBとなります。


追記2:NW7USの主張は(Land (er, FREQUENCY) Grab (Part 1) •AmateurRadio.com)の中でPSK、OLIVIAその他のユーザーが既に利用しているにも関わらずWSJT-Xは「このQRMに関してコミュニティー間での話会いが無いままWSJT内での議論のみで」WSJT-XのJT65/JT9の隣接した周波数にFT-8の周波数を選んだこととその後WSJT-X側は実際はOLIVIAはレポートフォーマットに入っていないReporterで見る限りそんなに利用されていないために彼らの抗議を無視したとしている。そしてこの振る舞いは粗野で傲慢で僭越で紳士協定違反であると述べてこれがIARU R1 HF Manager DF5JLの介入を正当化しこの結果IARUの正式な介在を歓迎すると述べている。

冒頭で述べたように2017年にFT8の周波数割当てにはJAの3.5MHzオフバンド問題解決のため直接的にかかわった経緯がある者として小生はNW7USの主張にはある程度の合理性があるのは事実である。これは当時小生も含めWSJT-XユーザーはQRPユーザーが主流でフレーム間隔15秒のFT8に対しては感度劣化から成功に懐疑的であったので従来フレーム間隔1分のJT65/JT9の帯域をそのまま残して機械的に隣接周波数をFT8に選んだのである。その時にOLIVIA等と調整をしているとは担当であったG4WJS、Bill Sommervilleからは聞いていない。3.5MHzでのFT8のQRGを最上端の3.573MHzに選んだのは小生自身であり、これはオフバンドを起こした最もポピュラーなJT65を最下端の3.570MHzに置いてオフバンドから保護したかったためである。Billは小生の提案を即日実施したのを覚えている。小生の意に反してFT8の運用が盛んになりFT8が再びオフバンドを起こすのではないかとの「なんとか警察」の懸念を聞いたし実際ひやひやしたのを覚えている。その点で特に14MHzでのOLIVIAのクレームを真摯に聞くべきであったという主張に合理性はある。

しかしFT8の導入直後に小生のようなQRPユーザーは隅に追いやられQROのDXCCユーザーに変わり、爆発的なトラフィック増を背景にWSJT-X同士のQRMが激しくなったことでWSJT-Xの帯域拡大路線は正当化され、その後JT8CallもFT4もFST4も順次隣接に機械的に拡大割当てられていくことになり使われなくなったJT65/JT9の割当て廃止も近距離でのFT8からFT4への置き換えの議論も忘れ去られていった。この点においてNW7USの主張は間違っている。事実はWSJT-Xはライオン(強者)となりOLIVIAはネズミ(弱者)となり紳士協定の成立条件である「対等性」を失ってしまったためネズミは「安全な隙間」を求めて退去しなければならないのである。

この時点でIARUはバンドプランのテーマとしてネズミが生存できる「隙間」を残したData帯域の拡大の必要性を認識しそれに伴うCWとSSBとの帯域幅の調整とリージョン間の統一に限定すべきであった。IARUが現実的で理性的であれば、現状のバンドプランではライオンとネズミの対等性が保たれず紳士協定の前提が維持されないとの正常な判断があったはずである。にも拘わらず、Data帯域をWSJT-XとOLIVIAとに細分割するというNW7USの「新紳士協定」の主張を組入れるという間違いを犯してしまった。加えてネズミのために用意した隙間にリージョン3では新たな強者「トラ」がいるのにこのトラを追い出せという2重の間違いを犯してしまった。いわゆる「7041」問題を引き起こしてしまったのである。

願わくは、IARUは7040から7080を世界統一のData帯域に拡張に留め、OLIVIAとWSJTーXの周波数の細分割当てはIARUのバンドプランから外し隙間を用意した従来通りの紳士協定とする理性を取り戻してもらいたいと思う。

JARLも総務省と省令の改定を頻繁に行い問題の脚注を削除し7040から7080での国内外の区別のないデータ運用を可能としてもらいたい。この40kHzは現状の15kHzに較べて広くなったように思えるが実際は外国との通信に利用可能な55kHzを含めると現在70kHzの帯域が用意されているため逆に43%(40kHz)の削減になっている。これは国内と外国を区別による分割損をなくすことによって「周波数有効利用効率」が向上したことを意味している。これが混雑する7MHz帯での周波数利用効率の観点からの脚注削除の根拠である。

それとともにIARUは機構改革を行い従来の各国1代表のメンバー制度からユーザー団体のワーキンググループへの参加を認め円滑なユーザー間での紳士協定の実施のための場と適切なIARUバンドプラン改定への入力の場を提供すべきである。特にデジタルではフォーマットの生存期間が短く古いフォーマットの居座りで新規フォーマットの利用が制限されることが多いために紳士協定のルールづくりが必要でありこれはIARUで標準化すべきである。また歴史的にARRLが支配的にIARUを運営してきたために米国のユーザー間の争いの解決が運営に強く反映されるのを防ぐ意味で重要であり非アマチュア業務の電波利用を策定する国際機構ITUでは常識の運営方針である。

また、IARUのバンドプラン活動を世界的なアマチュア周波数帯域の共通化に軸足を移し、特に1.8MHz帯、3.5MHz帯および7MHz帯における帯域共通化に関してITU SG5への提案をなすべきである。特にJAにとっては3.5MHz帯におけるHLLとJMHの気象FAX運用停止と中国のOHレーダーの運用停止は3.5MHz帯においてData帯域を確保する点において重要なテーマである。

(2022年3月3日記)








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