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6月, 2025の投稿を表示しています

TS-570SDRプロジェクト

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  1.はじめに もう40年近く使ってきたTS-680のリレーなどの故障でそろそろ引退の時期になった。引き継ぎの機種にTS-570を選んだ。TS-570は28MHz以下の前期型と終段をMOS-FET化して50MHz帯も運用できる後期型があるので注意が必要である。 落札したTS-570M。液晶パネルの泡が気になる。 TS-570後期を選んだ理由は 1)もうTS-680はヤフオクでの出品頻度が下がってしまっている。後継機種のTS-570は3万円ぐらいで定常的に出品されている。部品の経年変化を考えるとTS-570が断然よい。 2)ファイナル部全部がモトローラMOSFETで50MHz帯まで一貫構成されているとともに2つのANTの選択が可能なANT TUNERが内蔵されている。本体がTS-680と同じサイズである。表面実装部品が多く使われているのでサブ基板内での改造は難しいが、ブロック化されているためブロック間の入出力端子を利用した改造が現実的である。 3)単体で十分使える性能なので電源ボタンを押すだけで運用開始できる。  4)同じKenwoodなのでTS-680SDRに合わせたRedPitayaの改造ソフトがそのまま使える。 等である。 2.準備 ヤフオクでTS-570 50W機を28,500円で落札した。付属としてつけてくれたいたハンドマイクの銘板を見て同じヤフオクでの落札情報を見てびっくりした。なんと3万円台で取引されている。品名はASTATICS575−M6である。内蔵の006Pが消耗しているようでネジを外して内部を見たが大変きれいである。 電源を入れてざっとチェックをしたが、MULTICHのボリュームがいわゆる「滑るまたは転ぶ」のとLCDのアクリル板が曇っている。これはTS-570の2大故障のようで早速修理に取りかかる。 3.MULTICHボリュームの修理 Micのボリュームの調整をする時に最初は数字が1つずつ上がるが8からの増加は全くいい加減になる。原因はロータリーエンコーダーの内部にグリスがたっぷりつけられていてこれが接点部にまわって接触不良を起こすとのこと。対処は分解してアルコールまたは接点洗浄剤でクリーニングするか代替え品がDigikeyにありこれを購入して置き換えるかの選択である。日本ではDigikeyの代理店のマルツで送料も安く入手可能である。ま...

到来方向ともに偏波面を考慮した受信スモールループアンテナの製作

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  1.はじめに 10年ほど受信スモールループ用のアンプLZ1AQを使って到来方向を区別するために直角にクロスした2つのループを切り替えて利用してきた。 今回その発展として 1)2つのループを別個のアンプに収納してRedPitayaの2つの受信端子に接続してThetisなどのSDRソフトの2チャネル同時受信が可能とした ことに併せて 2)従来の2つのループは垂直偏波信号の受信であったが水平設置した3つめのループを追加して水平偏波信号を受信可能とした とした。その上で、LZ1AQのアンプにはループアンテナの切り替え機能があり3つのループアンテナを組み合わせてNVISおよびNHIS状態において偏波ダイバーシティー受信が可能とした アンテナを製作した。 図1.3つのループと2つのアンプのスモールループ 2.形状 直径5.5mmの園芸用のグラスファイバー支柱を長さ6cm直径6.0mmのアルミパイプで連結してループ形状にしてその周りに3.5sq~5.5sqの撚線を這わせたアンテナとした。これを3つ製作し図のような配置のアンテナを製作した。 LZ1AQアンプの切り替え機能を利用したので3つのループアンテナの選択は 1)天頂方向からの回転偏波信号受信 2)水平方向からの回転偏波信号受信 が可能になった。 図2.直径5.5mmのグラスファイバーを長さ6cm直径6.0mmのアルミパイプで連結 図3.直径1.4mのループ形状に

実際のFreeDV RADEのPAPRはどの程度?

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  1.はじめに 実際はいくらかJE3PRMさんが実測している ブログ があり、これに触発されてFreeDV(V2.0.0)のTransmitのマイク入力にあらかじめ録音しておいた小生の15秒ほどの試験メッセージを流しTransmitの送信機入力をVoicemeeterのカセットテープ画面で録音したWAVファイルをAudacityで実測した。 2.AudcityのインストールとPeak and RMSのプラグインのインストール まずWindowsの Audacity で適宜インストールしてそのプラグインをインストールした。今回のプラグインはピークと平均は同時に測れる便利さで 「Peak and RMS plugin」 を使ってみた。ダウンロードはこのページの「Download You may download  Peak and_RMS.ny by clicking here」で行うこと。 3.測定結果 約125mS(9.65秒から9.77秒)の1フレーム部分を選択すれば Peak -5.274dB RMS -10.002dB で差は4.728dBであった。 1フレーム(125mS)のPAPR 10秒(5秒から15秒)を選択すれば Peak -3.761dB RMS -9.858dB 差は6.097dBと大きな値になる。 約10秒のPAPR 4.SSBトランシーバーでのPAPR許容量との兼ね合い 100W SSBトランシーバで考えると ピーク電力=100W(電波法の制限) 平均電力=25W(100Wから-6dB)くらい(非効率なリニアアンプに起因する発熱からの制限) が妥当だと考えている。 これは本来のPAPR=「PeakとRMSの差」で6dBである。すなわち、今回の実測したPAPR約6dBはちょうどよい。逆にこれ以上PAPR劣化を少なくしてRADEの仕様のように1dB以下(本来のPAPR=4dB以下)に追い込んでも平均電力が50W近くになってしまい発熱でファイナルを破壊する危険性がある(実際に壊したとの話も聞いている)。もちろん平均電力が0Wに近くても長時間50Wであっても100Wのピーク値が出せる直線性がありかつ発熱に強いSSB機をお持ちの方なら問題ないが少数だと思う。 5.まとめ 商用のリニア無線機の発熱保護を前提にすれば実測のPAPR6dB...

FreeDV RADEに音楽ソースを通してみると

  1.はじめに 先日ある方からRADEに音楽を流してみると、「とても聞けたものではない」と聞いたので、面白そうだと思ってやってみた。 2.実験 音楽ソースとして、 2022 WorldCupのジングル をYutubeからダウンロードして48kpbs WAVフォーマットでオーデイオファイルとした。これをVoiceMeeterのカセットテープ画面で再生してFreeDV2.00の"Input From Microphone To Computer"に入れていったん画面 "Record"をクリックしてRADEのエンコーダー出力ファイルを作った。その後これをFreeDVのToolsの"Start Play File"でFARGANでデコードしたスピーカー出力を再度VoiceMeetrのカセットテープ画面で最初の約20秒を録音してMP3変換した。 3.結果 まったく原音のように音楽には聞こえないが、ノイズっぽい歪んだ音にも聞こえない。どちらかというと鼻歌である。 FreeDVの資料ではエンコーダーは人体の ソース・フィルターモデル として扱っていると書いてある通りチャネルボコーダーとしての音声特徴量をまじめにできるだけ正確に抽出していることが理解できたが、当たり前のことだが楽器がソース・フィルターのモデルではないので音楽音源にはまったく不向きであることもわかった。資料に「音声特徴量の抽出」とだけ読んでは理解できないが、音声以外の音を通してみるとよくわかる価値がある実験であった。

FreeDV V2の魅力

  1.はじめに 以下小生の体験をもとにFreeDVの魅力を書いてみました。ただし不満もありますがこれは書いていませんのでご注意を。 2.FreeDVの魅力 FreeDVの魅力は 従来のSSB音声通信と較べて ・所要無線帯域幅はSSBと同じく3kHz以内で同等以上の最小感度の実現   ・RADEによりPARPが1に近くなりスピーチプロセッサー不要 ・音声符号化に電波伝搬路のフェージングによる劣化がなくAGC不要 ・音声符号化で電波伝搬路からの雑音が抑圧されてNR,NB機能不要でアナログFM以上の雑音品質 ・同期再生機能で同調操作がいらず一般利用者に不評なSSBのモガモガ音なし ・スマホの4kHz音声帯域を上回る8kHzで冬季には相手局のリアルすぎる咳きこみ音が楽しめる ・定量的な受信電波伝搬路の、S/N、フェージング周期変動をリアルタイムで可視化 ・FreeDV Reporterで交信相手局のみならず周辺のFreeDV受信局情報をリアルタイムで可視化 また、過去約30年間アマチュア無線界において商用特許権で保護された音声符号器の採用で自由な進歩が阻まれてしまったが、GNU License条件でソースコードが開示されており誰でも自由に改善できることは音声符号化技術に興味のあるアマチュアにとっての魅力です。 今回FreeDVを実体験することで、1923年にもっとも周波数占有帯域が狭くもっとも電力効率の良いとされるSSBの登場でその後開発が停滞したHF帯音声無線技術がやっと100年後にAI技術の進歩次第ではSSBを凌駕する通信方式をアマチュア無線界から提示できる可能性を一般のアマチュアも感じてもらえると思っています。 3.参考文献 鈴木誠史、吉谷清澄; 通信方式としてのSSBの変遷; 通信総合研究季報、 Vol 34 No.171、 June 1988 David Rowe, Jean-Marc Valin; RADE: A Neural Codec for Transmitting Speech over HF Radio Channels;  2025年6月10日 記